東京都には、特別支援学校(小学部・中学部)の児童・生徒が住んでいる地域の学校に副次的な籍をもつ「副籍制度」があります。地域の同年代の子どもたち同士が関わりをもち、地域社会の中で共に成長していくことをねらいとしています。
この制度を利用して交流をするかどうかは、本人及び保護者が選択できますし、実施する場合もどんな交流をするかは希望に沿って決めていきます。おおまかには授業や行事に参加する直接交流と、学級通信の交換や作品の展示などの間接交流があります。
東京都では平成19年度より全都で実施されており、それ以前は居住地校交流などという形で行われ、その積み重ねと保護者の要望により制度として整えられました。もちろん「共生」という考え方が重視されるようになった背景があります。
自分の住んでいる地域の学校が「地域指定校」となって交流をします。(原則としては居住地に一番近い学校が指定校になりますが、きょうだいのことなど要望を伝えることはできます。) 交流の方法や回数、内容等は地域指定校と話し合って決めていきます。
きょうだいとは別の学校になった場合でも住んでいる地域の近くですから、きょうだいの友人がいたり、学校外の場所で声をかけられたりすることもあるでしょう。保護者は障害のある子のことだけでなく、きょうだいのことも考えて、副籍交流をした方がよいのか、どんな形がよいのかを考えて決めています。
地域でどんなふうに生活をしたいのか、兄弟姉妹がどんな関係で地域の人々と接してほしいのか。保護者はそういうこととも考えているのでしょう。
でも、子どもが小学生になる時点で兄弟姉妹関係の将来が見えている人はいませんから、「こうなるといいなあ」、というふんわりとしたイメージを描いてみて、副籍校交流をやろうかな、今はやらなくていいかな、と考えてもいいと思います。年度ごとの更新ですから、やりながら考えてもよいのです。
交流を始める前に障害のことやそのお子さんについて理解してもらうために、特別支援学校の教員がクラスで話す時間を設けたり、保護者がわが子について話す機会をもったりするケースもあります。交流には保護者が付き添っていきますので、保護者にとってもその子と共に地域の子どもたちと接する機会になります。保護者も緊張しますね。
時には、きょうだいは友だちからこういうことを言われているのかなと、ドキッとすることもあるかもしれません。低学年の子は「どうして車いすなの?」「どうしていつもタオルを持ってるの?」など、ストレートにきいてくることもあります。でも、無関心だったり、勝手に思い込みで決めつけられたりするよりきいてくれた方がいいです。ちゃんと話してあげることができますからね。
親が体験したことをきょうだいにも伝えて、ドキッとしたこともよかったことも体験を共有することは大事なことのように思います。
塩谷淑子