イベントレポート 医療的ケア児のきょうだいの“いつもは話せない気持ち”

投稿者: | 2021年10月21日

2021年2月27日(土)に世田谷区の助成を受けて 「医療的ケア児のきょうだいの“いつもは話せない気持ち”~子どもたちの声に耳を傾けるオンラインイベント~」を行いました。
子どもたちの大切な気持ちと大人のきょうだいたちからの言葉をダイジェストでお届けします。

【キーワードは「医療的ケア」と「きょうだい」】

今回のオンラインイベントのキーワードは2つ。「医療的ケア」と「きょうだい」です。
「医療的ケア」とは、日常的に行われている人工呼吸器管理、チューブを通した栄養注入、たんの吸引などの医療処置のことで、生活を援助するための医療的な行為のことです。
そして、「きょうだい」とは、病気や障がいのある人の兄弟姉妹のことです。きょうだいのことは知られる機会が少ないのが現状で、そっと一人で不安やプレッシャーを抱えていることもあります。

きょうだいのヒーロー「シブレッド」(NPO法人しぶたね)の愛にあふれたメッセージからスタートしました。

可愛く偉大なあの子たちが、ひとりぼっちじゃないように、 「わたしはいらない子」なんて感じることのないように、 勇気をもって寄せてくれた大切な声をみんなで聞かせてもらって、きょうだいさんたちの安心につなげていきましょう。 

【きょうだい児のメッセージの紹介とコメント】

今回は医療的ケア児者の若いきょうだい(20歳未満)から27通のメッセージが寄せられました。
3つのテーマに分けてメッセージを紹介し、きょうだい支援活動をしている大人のきょうだいからコメントを伝えエールを送りました。

〇テーマ1「こんなことに困っている」

◆メッセージ
・どこにも行けない。
・外食や出かけるのを我慢している。
・お母さんやお父さんにもっと甘えたい。
・お母さんが弟の入院に付き添ってしまうからいやだ。
・母が弟の世話で忙しくて自分にかまってくれないのを、愛情がなくなったのではないかと思ったことがある。
・弟の本当の意志がわからないのがかなしい。
・兄のことを友達にどうのように伝えればいいか迷っている。
・友達にいろいろ聞かれると困る。
・親の介護が必要になったときのことを不安に思う。

◆大人のきょうだいから
・まず、困ったり甘えたいと思うことがいけないことだとは思わないでほしい。
・自分の気持ちに気づいていることは大切なこと。
・「さびしい」と思ったり言ってもいいんだよ。
・きょうだいは自分の気持ちに気づいていないこともあるので、周りの人の想像力が大切。
・言葉を話さない人とも、表情や声などから想像していくことでコミュニケーションはできるんじゃないかな。
・まわりの人にすべてのことを話さなくてもいい。自分の気持ちを大切にして、伝えたい事や伝えたくない事を決めていい。
・親が年をとってからのことは、大人のきょうだいにとっても課題になっている。
・自分の未来を描けない時期があったが、話ができるきょうだいとのつながりができて心が楽になる。
・将来の不安は尽きないけれど、自分のやりたいことを優先してもいい。

〇テーマ2「思い出に残るエピソード」

◆メッセージ
・テレビを見たりゲームをしたりするのが楽しい。
・たくさんあって言葉にできない。一緒にいるだけで幸せ。
・「もみじの家」(医療的ケア児者の為の短期宿泊施設)に一緒に泊まった時。ママも私ものんびり過ごせて楽しかった。
・イベントに参加して、いっぱい医療的ケア児と知り合いになれたこと。
・弟が笑ってくれてうれしかった。
・姉が運動会で家ではやってないことをやっていた。
・初めて名前を呼ぼうとしてくれた時、弟の成長を感じて嬉しかった。
・妹がかわいい。おもしろい。自慢です。
・表情が豊かだから嬉しいし楽しい。
・世話を手伝うのは面倒だけどやりがいがあって楽しい。
・自分の学校の友達も弟を快く受け入れてくれた。
・友達が家に来るたびに兄のベッドに来て挨拶をしてくれる。

◆コメント
・みなさんが喜んでいる姿を想像して嬉しくなる。
・普段はあまり知り合うことのない医療的ケア児と知り合って仲間がいるとわかるのも嬉しいことですよね。
・自分も弟のことが大好きでした!
・一方で、自分の兄弟姉妹を好きになれずに苦しく思っている子は、それを大事にしてもいい。
・自分にとって妹は大切な存在だが友達がわかってくれるか不安があった。普通に接してくれると嬉しい。

〇テーマ3「期待したいこと」

◆メッセージ
・もっと障がい者のことを知ってほしい。
・「きょうだい児」という言葉が広く知られるようになってほしい。そうしたら気が楽になる。
・差別があることを知ってほしい。
・税金を福祉に使ってほしい。施設を作ったり、病気をなくすことに力を注いでほしい。
・バリアフリーにしてほしい。
・いろんな人が共存できるようになってほしい。
・障がいを特別扱いしない社会になってほしい。
・差別のない世の中になってほしい。悪く言うのをやめてほしい。
・「障がい者は可哀想」はもちろん、「障がい者に優しくしよう」という差別的な思考が社会からなくなってほしい。

◆コメント
・きょうだいのことは看護師の教科書には出ている。学校の先生になるための教科書にも出てほしい。
・障がいのある人を見て、子どもはわからないことを素直にきく。それに対して大人が「そんなこと言わないの」「指をささない」と言うことに傷つく。周りの大人が説明することもサポートになる。
・子どもたちはいろいろ気づいている。大人たちには見守ってほしい。何かをしてあげることだけがサポートではなく、見守ることも大切。
・きょうだい児は多様性を子どものうちから身につけていて、それに気づいていない友だちと話すことが難しいこともあるかもしれない。
・「障がい者」というくくりではなく、目の前のひとりの人として接してほしい。「障害者だからやさしくしよう」なのか、そうすると「元気だからしっかりしよう」と自分を追い込むことにもなる。

〇きょうだいからの質問~他のきょうだいに聞いてみたいな

①兄弟姉妹の障がいをどう伝えたらよいですか?

◆回答
・自分は先回りして妹のことを話した。予防線を張っていた感じ。
・相手との関係性でどこまで話すか決めてよい。
・言うのが辛い時は全部言わなくてもいい。
・親もどう話したらいいのか迷っていることもある。病院や訪問看護や支援者など、他の人にアイディアをもらってもよい。
・家族であらかじめどう話すかの作戦会議をするとよい。心の準備ができるし、困ったことを家族で話せることも大切。
・きょうだい同士の出会いで、同じことを悩んでいる子がいるとわかって少し楽になることもある。

②ストレス解消はどうしてるか?
 
メッセージを寄せてくれたきょうだいも気分転換の方法を教えてくれました。
「歌う」「誰かと話す」「推しを見たり聞いたり」「運動」「ゲーム」「料理」などだそうです。
大人のきょうだいはどうしているの?

◆回答
・自分の好きなことをする。
・映画、ピアノを弾く、猫をなでるなど。
・自分を外に出すようにする。人に話したり、思いを紙に書いたりする。

〇大人のきょうだいから若いきょうだいへのメッセージ

・きょうだい達のヒーロー、シブレンジャーには「黒」もいる。悪い気持ちも伝えていいのです。自分こそが本物のヒーローと思ってほしい。
・きょうだいの皆さんが、気持ちを届けることをしてくれて嬉しい。
・悩むことは悪いことではないので人に話していいし、時には考えるのをやめてもいい。
・大人のきょうだいも人それぞれ。向き合うこともいい。向き合わずにそっとしておくのもいい。
・あなたはひとりじゃない、仲間がいることが伝わるといいな。
・親も頑張らなきゃと思わないでほしい。親自身も自分の好きなことを大切にしてほしい。
・きょうだいのまわりの環境が大切。社会で見守ってほしい。

ラストメッセージ「きょうだいたちを大切に思うあたたかな社会へ」

大切な思いを伝えてくれたきょうだいのみなさん、ありがとうございました!

主催:
きょうだいと家族の応援団 にじいろもびーる

協力団体:
成育医療研究センターもみじの家
NPO法人しぶたね(大阪)、静岡きょうだい会(静岡)、きょうだい会SHAMS(栃木)

出演:
◆司会
内多勝康 成育医療研究センターもみじの家ハウスマネージャー
◆パネリスト 
NPO法人しぶたね (大阪) 代表 清田悠代・シブレッド(きょうだいのヒーロー)
静岡きょうだい会 (静岡)  代表 沖侑香里
きょうだい児と家族の応援団 にじいろもびーる (東京)  代表 有馬桃子