「きょうだいのライフステージときょうだい支援」学習会レポート ①

投稿者: | 2023年12月27日

 2023年12月2日(土)に中野区社会福祉協議会さんとの共催で、第4回にじもびきょうだい支援学習会を開催しました。
 会場とオンラインのハイブリッド開催とアーカイブ配信という初の試みを実施し、スタジオよっしーさんに配信・録画のサポートをお願いしました。
 講師の英国心理士・前田節子さんは、にじもびでのご登壇は4回目となります。今回は、きょうだいが「ひとりの子ども」として健やかに育つためにどんなサポートが必要なのか、ライフステージに沿ってお話いただきました。

【子どもの成長に合わせた6つの段階】
 子どもの成長の過程を6つのライフステージに分けて考えます。

①妊娠期(イメージづくり)
 親は出産準備とともに、家庭生活がどのように変化するか、また子育てについてイメージを描きます。イメージが持てないと具現化できません。
⇒例えば英国のパパママ学級のようなセミナーでは、女性ホルモンの変化で夫婦間にケンカが起こりやすくなるかもしれないこと、とか、産前産後の食事のために今から食材を冷凍しておくこと、など具体的アドバイスがあるそうです。

養育期(生後~24か月)
 親は愛着の絆を形成し、赤ちゃんと家族のニーズ、仕事、社会生活等のバランスをとることを学びます。母子は最初の強い絆であり、子どもは安全・安心を得られる空間で保護者との自然な愛着関係を身につけます。
⇒子どもにとって「見守られている」という安心感が大切です。

「ダメはダメ」のルールを身につける時期(2~5歳)
 親は子どもが社会的なルールを守り、セルフ・コントロールできるよう、ルールを教えます。ルールがはっきりしていることが必要です。子どもは、その中で「して良いこと」と「いけないこと」を学びます(イヤイヤ期)。
ルールは教えなければわかりません

 この時期、複数の子どもがいる場合、ママをめぐってのやきもちや上の子の赤ちゃんがえりが起きたりします。
⇒食事や身支度など、本当はできていることをしなくなったり、かんしゃくを起こしたりしますが、それは自分に注目して欲しいから。
⇒「やめなさい!」と声を荒げると反動が大きくなるので、例えば「ママが疲れちゃうから、やめてほしい」「〇ちゃんが△してくれたらうれしいな」のように「してほしいこと」を伝えましょう。

●きょうだいの場合●
 病気や障がいのある子に対して「(よだれなどが)汚い!」「なんで○○できないの?」となど、きょうだいが言うことがあります。
⇒親がびっくりするような言葉も、子どもからしたら素直に思ったままを伝えているのです。「よだれは食べ物を飲み込んだり口の中が乾かないようにするために必要なもので、汚くないよ」などと客観的に答えます。兄弟姉妹の状況(病気や障がいについて)伝えるチャンスでもあります。

解釈を学ぶ時期(5歳~思春期)
 親は子どもに、他人の視点を持ち(視野を広く持ち)他人と自分の考えは同じではない(多様性)ことを知り、それに応じて対応することを教え始めるとよいでしょう。
 子どもたちは仲間の力関係の変化に対処し、そこでの自分の立ち位置を学んでいきます。

●きょうだいの場合●
 きょうだいに「あとでね」「ちょっと待ってね」と言わざるを得ない状況が起こりがちです。
⇒「さっきはごめんね」「ありがとう」とねぎらいの言葉をかけてあげましょう。
 
自分の兄弟姉妹を奇異の目で見られたり、心ない態度を示す人がいることに傷つくことも。
⇒心ない人の言葉にとらわれず「そういう人もいるんだ」と距離をおけるように、きょうだい自身の自己肯定力を高めたいところです。

 兄弟姉妹のことを「恥ずかしい」「友達に言いたくない」「イヤだな」と思う気持ちと、そういったネガティブな気持ちを持ってはいけない、という葛藤が生じることも。
⇒ネガティブな気持ちも持っていることは自然と大人が理解していることが大切です。その子の気持ちを否定するのではなく、耳を傾けましょう。

共存を学ぶ時期(思春期)
 子どもは、第2のイヤイヤ期であり、自分・家族・友人・社会等のバランスを探す作業に入ります。
子どもの自由と自立を高めることと、親の「最終決定権」を保持することとのバランスを見出だす必要があるため、親子双方にとって難しい時期です。

⇒子どもは親の決めた枠を揺さぶってきます。その都度、ハウスルール(思春期のきょうだいについて①参照)は親子了解のもと変化してゆきます。
親子そして両親同士のコミュニケーションとお互いを尊重する気持ちが重要になります。お互いを尊重していない両親には「親は嘘つき」と子どもは感じるでしょう。

●きょうだいの場合●
 きょうだいが引き受けている家庭内役割(ケアラー・愚痴の聴き役・相談相手など)が親の支えになることもありますが、子どもは「小さな大人」ではありません。子育ての主体は親であり、パートナーとの関係が大切です。
 きょうだいには、同じような立場の人がいることや、先輩きょうだいたちの多様な進路、病気や障がいのある兄弟姉妹は将来どのような生活になるのかなど情報が必要です。

出発の時期(思春期後期から成人期)
 出発段階とは、子どもが完全またはほぼ完全に自立したときです(子どもが実際に家を出るのと一致するとは限りません)。 親と子は新しい役割を形成し、より対等な立場でコミュニケーションを取ることができます。
 親にとって、親の役割を考え直すことが必要な、少し寂しい時期かもしれませんが、親自身が自分のしたかったことを再開するチャンスになるかもしれません。
 子どもは、ある程度の自信と、何かあったらサポートしてもらえる安心感と健全な自尊感情を持って巣立ちます。子どももまた、少し寂しい時期かもしれません。

⇒少し寂しいのは、相手とほどよい距離を保っている一つのバロメーターかもしれません。
 「共存」とは、相手を尊重する気持ちなのかもしれません!
 お互いを尊重し支える力は、物理的に支えることとは違います。

●きょうだいの場合●
 自分の選択へのためらいや不安を抱えているかもしれません。
「進学などのために家から離れても大丈夫?」「家族の役に立つ仕事に就かないといけない?」「兄弟姉妹の将来を自分が担うのかな?」「パートナー(になる人)に兄弟姉妹のことをどう伝えよう?」
そのような不安をもっている可能性があることを大人が理解していることと、不安をわかちあえる仲間とのつながりや情報があることが大切です。